水素、アンモニア、LOHC
川崎重工 液化水素SC構築に向けた商用実証国内基地が建設着工 2025/5/26
日本水素エネルギー(JSE)は、国際水素サプライチェーン(SC)構築に関する国内基地の建設工事を着工したと発表した。NEDOの「液化水素SC商用化実証」のプロジェクトとして、液体水素の受入および出荷用に貯蔵量5万m3のタンク、また今後建造する液化水素運搬船からの海上荷役設備、水素液化設備、水素送ガス設備、液化水素ローリー出荷設備を設置する。実証では、SCとしての性能、安全性、耐久性、信頼性、経済性などの要件を2030年度までに検証する。建設地はJFEグループの川崎市扇島東部の一角で、川崎重工を代表企業として、大成建設、東亜建設の3社で形成される共同企業体が建設工事を行う。
愛知県 名古屋港湾水素化PJでの水素供給インフラ設計・検証を開始 2025/5/27
愛知県は、「あいち水素関連プロジェクト」のひとつとして推進している「名古屋港湾水素化プロジェクト(PJ)」での、「商用化を見据えた水素供給インフラ設計・検証」が、NEDOの地域水素利活用技術開発委託事業に採択されたと発表した。事業は、港湾エリアならではの低コスト化水素供給モデルの確立を目指し、保安基準に適合した技術・事業性の検証を行う。
共同実施者として、豊田通商、大陽日酸、東邦ガスが参画する。豊田通商は事業化の実現性・経済性検証および事業取りまとめ、大陽日酸は供給インフラの設計指針構築・安全性検証、東邦ガスは出荷設備検討、運用検証を担当する。そのほか、愛知県、名古屋港管理組合、トヨタ自動車が協力を行う。

合成燃料
王子HD バイオマス・エタノールパイロットプラントを建設 2025/5/21
王子ホールディングスは、王子製紙米子工場敷地内に木質由来糖液・エタノールのパイロットプラントを新設し、5月21日に竣工式を行ったと発表した。木質由来糖液は、木材パルプの主成分であるセルロースをセルラーゼ酵素で分解し、グルコースを主成分としたものだ。木質由来エタノールは、この糖液を酵母で発酵させることで製造する。設置したパイロットプラントは、年間3,000トンの糖液、年間1,000kLのエタノールを生産する能力があり日本最大級となる。王子HDは、パイロットプラントでの実証実験を行い、2030年度の事業化を目指すとしている。

グリーンLPガス推進協 カーボンリサイクルLPガス合成技術の研究開発を開始 2025/5/27
日本グリーンLPガス推進協議会は、エヌ・イーケムキャット(NECC)と共同で、NEDOが公募した技術開発事業に提案した「カーボンリサイクルLPガス合成技術の社会実装課題解決に向けての研究開発」が採択されたと発表した。両社は産総研と共同で、再エネ水素や発電所などから回収したCO2を原料にDMEを製造し、触媒反応でカーボンニュートラルなLPガスを合成する基盤技術開発を行ってきた。採択された研究開発プロジェクトでは、LPガス合成の詳細検討、プロセス検討、商用化検証と社会実装に関するFS計画の策定を行う。実施期間は2025年度となっている。
大王製紙 バイオエタノールのサンプル提供を開始へ 2025/5/28
大王製紙は、パルプ製造技術を活かしたバイオファイナリー事業の取り組みとして、2025年6月からバイオエタノールのサンプル提供を開始すると発表した。2023年度にNEDOが公募した「バイオものづくり革命推進事業」に、Green Earth Institute(GEI)と共同で採択された「製紙産業素材を活用したバイオ燃料・樹脂等の商用生産に向けた研究開発・実証」事業での推進成果としてサンプル提供を行う。また、バイオアスパラギン酸やバイオコハク酸のサンプルについても順次提供を行うとしている。
現在は、ベンチプラントがGEIの木更津市にある研究所で2025年3月より稼働している。今後は、大王製紙の愛媛県四国中央市にある三島工場でのパイロットプラント、また2030年には年間数万kL規模の商用設備の稼働を目指し、事業化を進めている。

CO2回収、DAC、CCUS
住友ゴム CCUでOA機器用ゴムローラーを開発 2025/5/28
住友ゴム工業は、住友大阪セメントと共同で、廃棄物に含まれるカルシウムにCO2を固定化した人工石灰石を使用した合成ゴムコンパウンドを作成し、このゴムコンパウンドを使用したOA機器用ゴムローラーを開発したと発表した。NEDO GI基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発」プロジェクトのひとつとして住友大阪セメントが開発したCO2再資源化人工石灰石を活用した。1kgあたり約420gのCO2を鉱物固定していて、住友ゴムが生産しているOA機器用ゴムローラーすべてに適用した場合、年間で約36トンのCO2削減が見込まれるとしている。開発したOA機器用ゴムローラーは、大阪・関西万博の住友グループのパビリオン住友館内の住友ゴム工業展示ブースに展示されている。

日本特殊陶業 日立プラントサービスとCCUを実証へ 2025/5/29
日本特殊陶業は、日立プラントサービスと共同で、2026年10月より日本特殊陶業の愛知県小牧市にある小牧工場で、ボイラーから排出されるCO2を回収・液化し、利活用の実証試験を行うと発表した。日本特殊陶業が開発したCO2回収装置と、日立プラントサービスが開発した小型CO2液化装置を組み合わせ、1日あたり最大3トン、純度99.95%以上の液化CO2を製造するシステムを構築する。実証では、液化CO2の地域資源としての利活用方法の検討も併せて行う。両社は、実証試験で製造した液化CO2を愛知県内で2027年に販売するとともに、2027年内には1日あたり最大10トンの処理能力のCO2回収・液化システムの販売を予定する。

運搬・貯蔵、燃焼、その他
JFEエンジ 水素混焼ガスエンジン 混焼率45%まで引き上げ 2025/5/29
JFEエンジニアリングは、2024年より販売を開始した水素混焼ガスエンジンコージェネレーション設備JFE-MWM/Hシリーズを更新し、水素混焼率を最大45vol%まで引き上げたと発表した。既存の400~800kW級都市ガス専焼ガスエンジンコージェネレーションシステムを水素混焼用に改造し、2024年5月に水素混焼率最大25vol%として販売を開始した。今回、水素混焼率を引き上げる実証実験を行い、45vol%でも都市ガス13A専焼と同一出力、同レベルの発電効率を達成した。また、NOx排出基準の上乗せ規制値200ppm以下も満足する。
JOGMEC LCO2船舶輸送ガイドライン交付へ 2025/5/30
JOGMECは、CCSの普及と拡大に向け「LCO2船舶輸送バリューチェーン共通化協議会」を設置し、CO2の船舶輸送での仕様共通化を目的に2024年度にガイドラインを策定した。今回ガイドラインについて交付を開始したと発表した。CCS社会実装での、大容量CO2の長距離輸送における船舶輸送技術は確立しておらず、個々の企業が独自で検討を行っていた。JOGMECは、協議会を通じてCO2の船舶輸送仕様の共通化を行い、ガイドラインを作成した。ガイドラインの交付については、ウェブ上の申請書をダウンロードしメールで申請を行う。今後、実効性の確保に向け、ガイドラインの更新を行っていくとしている。

IHI マレーシア・MTCO社とバイオメタン製造検討 2025/5/30
IHIはグループ会社であるIHIプラントが、マレーシアのバイオガス関連エンジニアリング会社MTC OREC(MTCO)社と共同で、IHIプラントの排水処理システムを活用したバイオメタン製造の検討に関する覚書を締結したと発表した。パーム油製造過程で排出される廃水(POME)には、大量の有機物が含まれていて、自然発生的にメタンガスが生成され大気中に放出するという問題がある。IHIプラントは、嫌気性廃水処理システム「BIOPAQ IC」を提供していて、MTCOが保有する嫌気条件下での微生物の働きを利用する嫌気性カバーラグーン技術と組み合わせ、POMEからバイオガス生成を処理システムの開発を検討する。IHIプラントは、パーム産業の持続可能性を高め、エネルギー問題の解決に貢献するとしている。
体制
旭化成 アクリル樹脂事業から撤退 2025/5/27
旭化成は、メタクリル酸メチル(MMA)モノマー、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、アクリル樹脂(製品名:デルペット、デルパウダ)、SBラテックス事業から撤退すると発表した。旭化成は川崎製造所で1963年からアクリル樹脂などを製造してきたが、原材料コストの高騰や中国での石油化学製品の大規模生産能力増強を背景に需給環境が悪化し稼働率が低迷していた。状況は構造的で不可逆的と判断し、川崎製造所で製造している該当製品群から撤退することを決断した。対象事業の2025年3月期の売上高実績は346億円であった。アクリル樹脂については、2026年9月の生産終了、2027年9月の販売終了を予定する。また、現在川崎精製工場で製造しているアセトニトリルについては、韓国の子会社で製造し日本国内への供給を予定する。旭化成は、2026年3月期決算へ事業構造改善費として約250億円の特別損失を計上するとしている。
石油資源開発 LPG事業子会社をアストモス社に譲渡 2025/5/29
石油資源開発(JAPEX)は、連結子会社であるジャペックスエネルギー(JPE)の全株式をアストモスエネルギー(AE)に譲渡すると発表した。JAPEXは、JPE社を2009年に三菱マテリアルエネルギーから株式譲渡を受け子会社化し、LPGや重油などの石油製品の販売事業に取り組んできたが、収益力強化と中長期の事業基盤構築に向け、事業ポートフォリオの見直しの一環として、JPEの全株式を出光興産と三菱商事が保有するLPG輸入販売事業を手掛けるAE社に譲渡することになった。JPE社の2025年3月期の売上高は536億円、営業利益は4億円、自己資本比率は23%であった。株式の譲渡は、6月25日と12月25日の2回に分けて行われる予定としている。
三井化学 グリーンケミカル事業の分社化を検討 2025/5/30
三井化学は、石油化学事業を主体とするベーシック&グリーン・マテリアルズ事業(B&GM)について、他社との提携推進及び統合・再編に向けて、分社化の検討を開始したと発表した。2027年近傍にB&GMの分社化を予定する。三井化学は、長期経営計画の基本戦略で、ライフ&ヘルス系、モビリティ、ICTといった成長領域と、B&GMそれぞれで、他社提携を含む戦略を策定している。B&GMは、日本の産業競争力および経済安全保障、カーボンニュートラルなどで重要な役割を担う一方、事業環境については、海外での大型プラント新増設、日本の人口減少による需要減少などで厳しい収益状況にあるとして、現在推進しているナフサクラッカーの縮小集約、誘導品の再構築・高機能化に加えて、更なる構造改革を進める。B&GMは、フェノール事業、インダストリアルケミカルズ事業、サステナブル・フィードストック事業、ライセンス事業、プライムポリマー、ポリウレタン事業を中心に検討を行っていき、海外輸入品に対抗できる競争力を強化した上で、グリーンケミカルの推進および顧客、人々の暮らし、経済安全保障への貢献を行っていくとしている。
プラスチック
カネカ 生分解性バイオポリマー原料PHAの合成酵素の構造を解明 2025/5/27
カネカは、奈良先端科学技術大学院大学との共同研究で、生分解性バイオポリマーの原料となるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の生合成に関わる酵素「PHA合成酵素」の三次元構造を解明したと発表した。カネカが開発した生分解性ポリマーGreen Planetは、PHAの一種であるPHBHと呼ばれる物質だ。研究ではX線結晶構造解析を用いて、PHA合成酵素の全体構造を明らかにし、微生物細胞内でのPHA合成メカニズムを解明した。カネカは、研究成果を利用し高性能なPHAを効率的に作り出す研究への応用を進めるとしている。

M&A、出資
日鉄物産 水電解装置開発ノルウェー社に追加出資 2025/5/26
日鉄物産は、ノルウェーでPEM型水電解装置開発、製造販売を行うもHYSTAR(ハイスター)社に追加出資を行ったと発表した。ハイスター社は、2020年に欧州の研究機関SINTEFからスピンオフしたスタートアップだ。現在、欧州のファンドからの助成を受け、1.5GW規模の生産能力を持つ新工場を立ち上げ、最終的には4.5GWまで生産能力を拡大する計画を持っている。日鉄物産は、2023年にハイスター社に出資を行っていて、今後ハイスター社への素材供給を継続するとともに、ハイスター社の水電解装置及びスタックの日本での拡販を行っていくとしている。
統計
ニュースウォッチ
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