クリーンエネルギー&プラスチック関連動向     2025/6/9
クリーンエネルギー&プラスチック関連動向     2025/6/9

クリーンエネルギー&プラスチック関連動向     2025/6/9

目次

水素、アンモニア、LOHC

川崎重工 AEM水電解装置向け高性能電極を開発     2025/6/2

 川崎重工は、北海道大学大学院工学研究院と共同で、アニオン交換膜(AEM)水電解装置向けの高性能電極の開発に成功したと発表した。北海道大学が有する表面処理技術と川崎重工の水電解装置の知見を合わせ、従来商用化されているAEM水電解装置の電解レベル4.8kWh/Nm3に対して、約10%のエネルギー削減に相当する4.23kWh/Nm3(電流密度1.5A/cm2)を達成した。これは、欧州のClean Hydrogen Partnershipが定義した2030年のAEM開発目標値4.30kWh/Nm3をクリアしている。共同研究では、耐久性の向上やスケールアップなどの研究を継続し、開発を進めるとしている。

丸紅 中国からグリーンアンモニアを長期引き取り      2025/6/3

 丸紅は、中国の再生可能エネルギー製造販売を手掛ける远景能源(Envision Energy)と、内モンゴル自治区で生産されるグリーンアンモニアに関する長期引取契約を締結したと発表した。Envision社は、2024年に内モンゴル自治区・赤峰市で風力発電由来の電気を活用したアンモニアの試験製造を開始し、2025年後半以降、年間30万トン規模の商用プラントを稼働する計画だ。丸紅グループとしては初めてとなるグリーンアンモニアの長期引取契約となり、グリーンアンモニアの普及を推進していくとしている。

九州電力 UAEのAMEA社と再エネ及びグリーン水素で協業へ 2025/6/4

 九州電力は、グループ会社であるキューデン・インターナショナルが、アラブ首長国連邦(UAE)のAMEA Power社と再エネやグリーン水素分野での協業に関する覚書を締結したと発表した。AMEA社は、2016年にUAEのドバイで設立され、主にアフリカや中東、アジアで、風力発電や太陽光発電などの再エネ事業や、グリーン水素・アンモニア製造などの事業に取り組んでいて、現在20カ国以上で計600万kW超のプロジェクトを推進している。キューデン・インターナショナルは、九州電力グループが培った技術力を活かし、アジアを中心に環境にやさしいエネルギー供給に取り組んでいて、今後も様々な事業者との協業関係を構築して行くとしている。

INPEX 新潟県柏崎市でのブルー水素・アンモニア製造プロジェクトで天然ガス導入した運転を開始        2025/6/6

 INPEXは、新潟県柏崎市で推進しているブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験で、6月2日、プラント設備に天然ガスを導入した試運転を開始したと発表した。原料ガスは、INPEXが新潟県内の南長岡ガス田で生産する天然ガスを使用している。製造時に発生するCO2は、既にガス生産を終了した東柏崎ガス田平井地区の貯留層へ圧入を行う。実証で製造した水素は水素発電設備を通じて新潟県内に供給するほか、一部アンモニアに変換し需要家に供給を行う。INPEXは、試運転完了後、今秋にはプラント設備の実証運転を開始し、貯留層へのCO2圧入を開始するとしている。

合成燃料

ENEOS バイオエタノール20%混合ガソリンの開発実証を開始        2025/6/2

 ENEOSは、植物由来のバイオエタノールをガソリンに混合したエタノール混合ガソリンE20を、自動車の耐久レース「ENEOSスーパー耐久シリーズ2025」で提供し、開発実証を行うと発表した。燃料は、SUBARU、トヨタ自動車、日産モータースポーツ&カスタマイズ、マツダに提供される。ENEOSは、ENEOSスーパー耐久シリーズでのE20の供給を通じて、過酷なレース条件下での開発と実証を目指し、低炭素燃料技術の進展を進めるとしている。

大阪ガス SOECメタネーションのベンチ試験設備が完成       2025/6/3

 大阪ガスは、産総研と共同でNEDO GI基金事業に採択された「SOECメタネーション技術革新事業」でのSOECメタネーション・ベンチスケール試験施設が完成したと発表した。再生可能エネルギーを用いて、水とCO2を電気分解し合成ガスを生成した上で、大阪ガスが開発した触媒を用いたメタン合成反応装置でe-メタンを合成する。サバティエ反応メタネーションのエネルギー変換効率が55~60%であるのに対して、SOECでは700~800℃の高温による電気分解を活用することで、85~90%の高変換効率の達成を目指す。2024年度には一般家庭2戸相当のラボスケールでの試験を実施してきたが、完成したベンチスケール試験装置では200戸相当のe-メタン生成規模となる。当初、SOEC水蒸気電解装置とメタン合成装置を組み合わせ、性能確認を行いながら、高エネルギー変換効率を達成するための検証を行う。その後、更なる高効率化に向け、SOEC共電解装置を新設し試験を行う計画だ。大阪ガスは、2028年度~2030年度にパイロットスケール試験、2031年度以降の実証フェーズを経て、2030年代後半から2040年頃の実用化を目指すとしている。

CO2回収、DAC、CCUS

JCCL 家庭用給湯器からCO2回収    2025/6/5

 九州大学発スタートアップでCO2分離回収技術開発、社会実装を進めるJCCLは、家庭用給湯器からのCO2回収に成功したと発表した。JCCLは、小規模CO2排出源から直接CO2を回収する減圧蒸気スイング型CO2回収装置VPSA1、及び減圧蒸気スイープ型膜分離性能評価装置VSS1を開発している。今回、VPSA1を使用して、家庭用ガス焚き給湯器から排出される濃度5.7%のCO2を回収し、99%以上の濃度に濃縮する実証に成功した。JCCLは、今後ガスヒートポンプや空調設備、ボイラー、自動車などの小型CO2排出源からのCO2回収技術を発展させ、社会実装させていきたいとしている。

運搬・貯蔵、燃焼、その他

川崎重工 液化水素運搬船建造体制を今治造船、JMUと共同検討      2025/6/2

 川崎重工業は、今治造船、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)と、液化水素運搬船の建造体制構築に向けた共同検討を開始すると発表した。各社が保有する設備や人材などを相互に活用し、川崎重工が設計・建造する液化水素運搬船の後続船の建造体制の構築に向けた共同検討を行うとしている。

三菱ガス化学 メタノール二元燃料外航船が竣工       2025/6/2

 三菱ガス化学は、商船三井から長期貸船するメタノール二元燃料メタノール輸送船「第七甲山丸」が、韓国の現代尾浦造船で竣工したと発表した。竣工した第七甲山丸は、1983年に三菱ガス化学と商船三井が運行を始めた初代メタノール専用船「甲山丸」以来培ってきたメタノール海上輸送のノウハウを継承しながら、三菱ガス化学の環境循環型メタノールの海上輸送を行うとともに、メタノールを燃料として活用している。三菱ガス化学は、商船三井と共にメタノール二元燃料外航船の運用により、カーボンニュートラル社会に向けた取り組みを主導していくとしている。

関西電力 水素混焼発電実証で混焼率30%を達成     2025/6/6

 関西電力は、NEDO GI基金事業での「既存火力発電所を活用した水素混焼/専焼発電実証」プロジェクトで、2025年4月から開始した姫路第二発電所での大型ガスタービンで、水素混焼率30%(体積比)を達成したと発表した。発電した電力の一部は、4月から万博会場に供給を実施している。関西電力は、姫路第二発電所での実証を進め、水素発電の運用技術の確立を行い、2050年のゼロカーボン社会の実現に貢献するとしている。

体制

ENEOS 静岡県での次世代型エネルギー供給PFの開所式を開催      2025/6/2

 ENEOSはグループ会社であるENEOS Powerと共同で、静岡県静岡市清水区にある清水製油所跡地に建設した次世代型エネルギー供給プラットフォーム(PF)「ENEOSみらいコネクト」が完成し、開所式を実施したと発表した。3MWの太陽光発電設備、7.7MWhの蓄電池、自営線、EMS、ENEOSが設置した水電解型水素ステーションなどで構成されている。

クラレ ポリエステル関連製品の生産を終了     2025/6/3

 クラレは子会社であるクラレ西条(愛媛県西条市)で生産しているポリエステル樹脂およびポリエステル長繊維の生産を終了すると発表した。クラレは、1969年から長繊維用ポリエステル樹脂の生産およびポリエステル長繊維「クラベラ」の生産販売を、1987年からは成形用ポリエステル樹脂「クラペット」の生産販売も手がけてきた。近年の市場環境変化や設備老朽化に伴い、今後安定した生産および事業収益の確保が困難と判断し、生産終了の決定をした。各樹脂、長繊維は2026年12月末までに生産を終了する。

プラスチック

東ソー バイオ原料活用クロロスルホン化ポリエチレンを開発    2025/6/3

 東ソーは、バイオ原料を活用したクロロスルホン化ポリエチレン(TOSO-CMS)を開発し、量産化技術を確立したと発表した。開発したTOSO-CMSは、バイオ原料の活用により製品中の炭素元素のうち約90%以上をバイオ由来成分に置き換えた。石油資源使用量を低減し、製品製造から使用・廃棄までのライフサイクルで、温室効果ガス排出量が従来比約30%削減されるとしている。東ソーは、今後開発品のサンプルワークを進め、早期の上市を目指す。

ちとせ 微細藻類によるバイオPET樹脂を開発 2025/6/3

 ちとせグループは、微細藻類由来の炭化水素を主原料に用いたバイオPET樹脂(藻類由来PET樹脂)を開発したと発表した。PET樹脂は、エチレングリコールとテレフタル酸を重合して製造される。エチレングリコールについてはバイオ化が実現されているが、テレフタル酸の粗原料であるパラキシレンについては、これまで生物由来の資源から製造することが困難だ。ちとせグループは、微細藻類から得られる炭化水素「ポツリオコッセン」を原料として、従来技術より化学変換工程が少ないバイオパラキシレンを生成する技術を確立した。完成した藻類由来PET樹脂は、大阪・関西万博 日本政府館で展示されている。

協会

日本ガス協会 ガスビジョン2050 2025/6/3

 日本ガス協会は、日本政府が2020年10月にカーボンニュートラル宣言を公表し、第7次エネルギー基本計画等で、天然ガスがカーボンニュートラル実現後も重要なエネルギーとして位置付けられたことを受け、都市ガス業界が目指す2050年の未来像を示した「ガスビジョン2050」と、2030年までの具体的な取り組みを示した「アクションプラン2030」を発表した。
 ここでは、ガスビジョン2050及びアクションプラン2030の概要を示すとともに、カーボンニュートラル(CN)化実現に貢献する目標および施策を取り上げる。

ガスビジョン2050
 ガスビジョン2050では、3つのビジョンを掲げている。
 1. 災害に屈しない社会・産業・地域の構築に尽力する
 2. お客様に選び続けるソリューションを提供する
 3. お客様・地域のカーボンニュートラル化実現に貢献する

 ビジョン3のガスのカーボンニュートラル化では、2050年にガスのCN化を実現すると宣言し、e-メタンやバイオガスを中心にガスのCN化に取り組むとしている。

アクションプラン2030

 アクションプラン2030での、実行施策は次の4つとなる。
 1. 安全・安心・安定的にエネルギーを供給する
 2. 省エネ・天然ガスシフト・ソリューションを提案する
 3. e-メタンを中心としてカーボンニュートラル化を加速する
 4. イノベーションを推進する

 実行施策3のe-メタン導入に向けた取り組みとしては、海外でのe-メタンの大規模製造に向けた調査・検討を実施し、2030年度にe-メタンやバイオガスの1%供給を目指す。また、e-メタンが輸入・製造場所とパイプラインでつながっていない場所でも、環境価値移転構築に貢献するとしている。

 実行施策4のイノベーションの推進では、e-メタン製造のための革新的技術開発としてNEDO GI基金事業等で推進しているハイブリッドサバティエ、PEMCO2還元、SOECメタネーションの革新的メタネーションに取り組み、高効率化・設備コストの低減・コンパクト化を目指す。さらに、革新的メタネーション以外でも、メタネーション関連技術として、水素製造、CO2分離回収、水素利用、CCUS等の技術開発に取り組むとしている。

ニュースウォッチ

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