水素、アンモニア、LOHC
広島大学 貴金属を使用しない低圧アンモニア合成法を開発 2025/7/15
広島大学は、広島大学自然科学研究支援開発センター 宮岡裕樹教授らの研究グループが、貴金属を使用せずナトリウムを触媒、あるいはケミカルルーピングプロセスの反応体として利用して、常圧から1MPa程度の低圧でアンモニアを合成する技術を開発したと発表した。従来のアンモニア(NH3)合成ハーバーボッシュ法では、水素(H2)と窒素(N2)を触媒下のもと、400~500℃および2.5MPa以上の高温高圧条件で反応させていた。研究では、水素化ナトリウム(NaH)とN2を400℃まで加熱して反応させナトリウム窒素化合物(NaNx)を生成させた後、N2をH2に切り替えることでNH3の生成を確認した。この際、Naは再生されるため消費されず繰り返し使用できるケミカルルーピングプロセスとなっている。研究では、Naを用いたNH3の生成は確認されているが、反応メカニズムの解明には至っておらず、今後キャラクタリゼーション解析を進めるとともに、触媒性能の向上などを行っていくとしている。

合成燃料
クラサスケミカル 早稲田大学とバイオガスから合成ガス生成に成功 2025/7/22
クラサスケミカルは、早稲田大学理工学術院 関根泰教授の研究グループと共同で、メタンとCO2から合成ガスを200℃以下の低温で生成することに成功したと発表した。従来のメタンとCO2のドライリフォーミングプロセスでは、800℃程度の高温が必要であり、エネルギーと反応時のCO2発生が課題であった。今回、1wt%Ru/La2Ce2O7担持触媒を用い高圧でのドライリフォーミングを行った結果、200℃の低温でCH4/CO2の高い転化率と優れたH2/CO比を確認した。バイオマスや食品廃棄物からはメタン発酵によりバイオガスが得られる。クラサスケミカルは、メタンから合成ガスを低温かつ安定的に転換できる技術は、今後増加が期待されるバイオガスによるメタンの活用先として、また多様な用途での化学物質の原材料としての使用方法が期待できるとしている。
ENEOS、TOPPAN 日本製紙富士工場で古紙バイオエタノール製造実証 2025/7/24
ENEOSとTOPPAN HDは、共同で推進する古紙バイオエタノール実証事業について、日本製紙の富士工場内にパイロットプラントを建設すると発表した。ENEOSとTOPPANは、2021年より難再生古紙などを原料とした国産バイオエタノール事業の立ち上げについて共同検討を行い、2024年3月より事業化に向けた実証事業を実施してきた。今回、実証を推進するために、1日あたり約300Lのバイオエタノールを生産できるパイロットプラント建設の工事に着手した。実証では、TOPPANが開発した、難再生古紙から不要部分を取り除き繊維分が豊富な原料にする前処理プロセスと、ENEOSが開発しているエタノール連続生産技術を組み合わせ、スケールアップ検討を行う。日本製紙は、富士工場の一部敷地の提供およびパイロットプラントの内糖化発酵プロセスの運転を担当する。パイロットプラントは2027年前半の稼働開始を予定し、実証を通じて得られた知見を活かし、2030年度以降の商用化を目指す。
CO2回収、DAC、CCUS
カナデビア 台湾企業と液化CO2貯蔵用タンクのEPC協業契約を締結 2025/7/22
カナデビアは、台湾のプロセス機器メーカー良聯工業と、CCSやCCUSに必要な液化CO2貯蔵用球形タンクのEPCに関する協業契約を締結したと発表した。CCS・CCUSの社会実装のためには液化CO2貯蔵タンクが必要であるが、貯蔵タンクの製造能力には課題がある。カナデビアは、円筒型タイプの貯蔵タンクは従来技術で対応可能であるが、球形型タイプについて実績はなかった。今回、球形型貯蔵タンクで多くの実績を有する良聯工業とEPC協業契約をすることで、液化CO2貯蔵用のタンク事業に積極的に取り組んでいくとしている。日本政府は、先進的CCS事業で、2030年までに年間600~1,200万トンのCO2貯留を目指していて、カナデビアはこの目標に合わせ、1基あたり1,000~6,000トン規模の液化CO2貯蔵タンクの建設を想定している。

運搬・貯蔵、燃焼、その他
東京都 地域熱供給での水素混焼ボイラーを稼働 2025/7/18
東京都港湾局は、産総研、清水建設、東京臨海熱供給、東京テレポートセンター、ヒラカワと共同で、グリーン水素を活用した共同研究の一環として、地域熱供給での水素混焼ボイラーの稼働を開始したと発表した。東京臨海副都心青梅地区にある東京臨海熱供給の青梅南プラントに、地域の冷暖房・給湯用熱供給用としてヒラカワ製水素混焼ボイラーと産総研が開発を推進する水素吸蔵合金タンクを設置した。グリーン水素は、山梨県の米倉山にあるP2G施設から調達する。

プラスチック
豊田通商 グループ会社が製造するASR由来再生プラがトヨタ車に採用 2025/7/18
豊田通商は、グループ会社であるプラニックが製造する自動車破壊残渣(ASR)由来の再生プラスチックが、トヨタ車で初となるクラウン(スポーツ)のフロントフェンダーシールに採用されたと発表した。プラニックは、豊田通商と小島プレス工業のグループ会社である小島産業が出資する国内最大級の再生プラスチック製造事業会社だ。再生プラスチック製造時の原料は、豊田通商のグループ会社である豊田メタルをはじめ、日本全国のASR再資源化施設や家電リサイクルプラントなどから回収している。プラニックでは、欧州で実用化された高度比重選別技術・設備を日本国内で初めて導入し、高品質な再生プラスチックの製造を行っている。
AGC 住友ベークライトにポリカーボネート事業を譲渡 2025/7/22
AGCは、住友ベークライトにポリカーボネート事業を譲渡すると発表した。AGCは30年以上前にポリカーボネートの製造販売事業を開始し、一般のポリカーボネートと比べて約80%も軽量なポリカーボネート断熱高耐候中空シート「ツインカーボ」や光学用シート材料は市場での高い評価を得ている。住友ベークライトは、中期計画でモビリティ分野を戦略的主要領域のひとつと定めていて、譲受するポリカーボネート製品をモビリティ分野での競争力強化に充てる。特に、運転支援分野では、住友ベークライトとAGCが持つ光学シート技術の融合によりシナジーを創出していくとしている。
三菱ケミカル トナー用ポリエステルレジン事業から撤退 2025/7/25
三菱ケミカルは、トナー用ポリエステルレジン事業から撤退すると発表した。三菱ケミカルは、1989年からトナー用ポリエステルレジン事業「ダイヤクロンTM」を展開してきたが、ペーパーレス化やコロナ禍以降の働き方変容に伴う印刷需要の縮小、および原料価格の高騰や人件費の増加により事業採算が厳しい状況となっていた。愛知県豊橋市にある東海事業所愛知地区での生産を2026年3月末に、販売を2026年6月末に終了するとしている。
M&A、出資
三菱商事、ENEOS ハワイでのSAF、RD製造事業に共同参画 2025/7/22
三菱商事とENEOSは、Par Pacific(パー)社が、米国ハワイ州で推進するカポレイ製油所でのリニューアブル燃料製造・販売事業に共同で約150億円(持分比率36.5%)を出資し、ハワイでのリニューアブル燃料を製造・販売するための合弁会社ハワイ・リニューアブルズ社に参画すると発表した。パー社は年間約15万kLのSAF製造能力を保有していて、燃料需要に応じSAFのほかRDやリニューアブルナフサの製造比率が調節可能となっている。事業では、ENEOSの石油精製販売およびバイオ燃料販売実績、三菱商事の原料調達およびグローバルネットワークを活用した燃料マーケティングの強みを活用する。
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