政策・規制、審議会
経産省 NEDO GI基金事業「合成燃料」の修正を提案 2025/10/9
経済産業省は、10月9日に開催された構造審議会で、NEDO GI基金事業「CO2等を用いた燃料製造技術開発」の中の「合成燃料(e-fuel)」製造技術開発について、実施事業者のENEOSからの申し出により計画の見直し提案した。
合成燃料(e-fuel)の製造収率、利用技術向上に関わる技術開発では、CO2と水素から液体合成燃料を高効率・大規模に製造するプロセスを開発するため、FT触媒の開発や逆シフトからFT合成まで連携したプラント設計などの開発を行ってきて、スケジュール目標をそれぞれ達成している。また、合成燃料の商用化時期が2040年から2030年代前半に前倒しになったことに伴い、2029年度以降に予定されていた「原料変動に対応した制御技術等の開発を2025年度からに前倒し、2040年に10,000BPD規模の商用プラントの運転開始を、5年程度前倒しすることにした。
一方、建設市況は高騰を継続していて、再エネ起点の合成燃料製造・実証コストは上振れすることが見込まれることから、パイロットプラントの建設・試験についてはGI基金事業での実証を中止し、ENEOSが別に推進しているバイオマス由来の合成燃料を優先するように計画の見直しを行う。バイオ系合成燃料は、木質系チップをガス化して合成ガスを生成した後FT合成を行うが、GI基金事業で開発したFT合成用触媒やプロセス技術および設備は共通に使用ができる。
これにより、GI基金事業として794億円を予算上限としてた研究開発費用は、137億円に修正することが提案された。

水素、アンモニア、LOHC
レゾナック ケミカルリサイクルによるアンモニア事業を拡大 2025/10/6
レゾナックは、川崎事業所でのアンモニア事業で、使用済みプラスチック由来の水素のみを原料とすることでアンモニア製造の低炭素化を図ると発表した。レゾナックは、日本触媒と共同申請したアンモニア製造および利用事業が、経済産業省の低炭素水素等供給および利用の促進に関する法律に基づく価格差支援対象事業として認定された。川崎事業所では、KPR(川崎プラスチックリサイクル)と、都市ガス改質による2つのプロセスにより水素を生成しているが、2030年に向けてKPRプロセスによる水素のみを使用するようにする。また、2024年からは、使用済みプラスチックに加え、使用済み衣料も原料として実証実験を開始していて、アンモニア誘導体のアクリルニトリルを繊維メーカー等に供給することで、衣料の資源循環の実現も目指している。
山梨県など サントリー工場へのグリーン水素導入実証を開始 2025/10/11
山梨県および技術開発参画企業10社は、NEDO GI基金事業の助成を受け、サントリー天然水 南アルプス白州工場(山梨県北杜市)及びサントリー白州蒸溜所(山梨県北杜市)の脱炭素化に向けた大規模P2Gシステムによる実証として、グリーン水素の製造、および天然水工場での利用を開始したと発表した。設置するPEM型水電解装置の水素生成能力は16MWで、計算上年間2,200トンの水素を製造することができる。利用面では、開発した水素ボイラにより、天然水工場で使用する熱源の一部を天然ガスから水素に転換する実証を推進する。今後、2026年末までの期間で実証を行い、様々な地域や場所へシステムの展開を目指す。
参画企業は、サントリーHD、東レ、東京電力HD、東京電力エナジーパートナー、カナデビア、シーメンス・エナジー、加地テック、三浦工業、ニチコン、やまなしハイドロジェンカンパニーの10社。
合成燃料
ENEOS 万博シャトルバス 合成燃料100%軽油で運行 2025/10/9
ENEOSは、西日本ジェイアールパス、日野自動車と共同で、大阪・関西万博で使用されている駅シャトルバスに、再生可能エネルギー由来の合成燃料を使用してきたが、段階的に濃度を上げ100%を達成したと発表した。ENEOS中央技術研究所内に設置した実証プラントで製造されたCO2から製造した軽油を使用している。ENEOSは、今後も、燃料・車両・運行の各社相互連携による実証を進めることで生産・利用拡大に対応していくとしている。
CO2回収、DAC、CCUS
カナデビア Inovaが英国のごみ焼却発電プラントでCO2回収施設を受注 2025/10/9
カナデビアは100%子会社であるInova社(スイス)が、英国に拠点を置くゴミ焼却発電プラント運営会社エンサイクリスより、CO2回収施設のEPC業務を受注したと発表した。英国チェシャ―州に建設中のごみ焼却発電プラント隣接地に、アミンスクラビング技術により、年間約37万トンのCO2を回収する施設を設置する。回収したCO2は、近郊のリバプール湾の枯渇ガス田への貯蔵が計画されている。ごみ焼却発電プラントでのCO2回収施設設置は英国では初となる。また、Inova社としても初案件となる。
出光 ベトナムでブラックブレット工場の運転を開始 2025/10/9
出光興産は、ベトナム・ザライ省に、ブラックペレット(BP)「出光グリーンエナジーペレット(IGEP)」の生産工場を建設し、10月8日に商業運転を開始したと発表した。BPは、樹木などのバイオマスを加熱処理したエネルギー資源で、燃焼時に排出するCO2は、原料の植物が育つ過程でCO2を吸収しているためカーボンニュートラルとされている。出光は、2020年よりベトナムで小規模デモプラントの操業を行い、需要家に試験利用での評価を得てきた。IGEPは、他のバイオマス燃料と比較して石炭に近い取り扱いが可能であるため、石炭用の既存設備の大規模改造は必要なくスムーズな燃料転換が可能としている。出光は、2030年ビジョンのもと、BPの供給目標を年間300万トンと設定している。

日揮HD SLBグループとCO2回収技術分野で戦略的協業 2025/10/10
日揮HDは、CO2回収技術を保有するSLB Capturi社(ノルウェー)およびその親会社であるSLB社(米国ヒューストン)と、燃焼後排ガスに含まれるCO2回収技術に関わるMoUを締結し、SLBグループと戦略的な協業可能性に関する協議を開始したと発表した。SLB Capturiは、その前身となるAker Carbon Capture社とSLBとの間に設立された合弁企業で、SLB CapturiのCO2回収技術は、世界初となるノルウェーのセメントプラント向けCCSプロジェクトに導入されている。協業対象は、CCSの需要拡大が見込まれ、かつ日揮グループがオイル&ガス分野などで豊富なEPC実績を持つ、アジア太平洋地域および中東地域としている。日揮は、グループが持つエンジニアリング力および当該地域での実績と知見などを基に、低・脱炭素化実現に貢献していくとしている。
運搬・貯蔵、燃焼、その他
レゾナック 水素混焼ガスタービン導入が経産省支援事業に採択 2025/10/7
レゾナックは、川崎事業所にある石油コークスを主燃料とした自家発電設備2系統の内、1系統を廃止し、都市ガス・水素混焼ガスタービンへの設備更新を行い、2030年第1四半期の運転開始を目指すと発表した。経済産業省の「排出削減が困難な産業におけるエネルギー・製造プロセス転換支援事業」に採択され、ガスタービン新設の投資を決定した。
川崎重工 液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が万博会場沖を航行 2025/10/10
川崎重工は、9月15日、経済産業省が大阪・関西万博と連携して開催した「水素閣僚会議」に合わせ、液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」が万博会場沖で航海したと発表した。
岩谷産業 東京都と水素燃料電池船活用で連携協定を締結 2025/10/10
岩谷産業は、東京都と東京湾で水素燃料電池船の運航事業を実施する協定を締結すると発表した。水素燃料電池船「まほろば」は、大阪・関西万博で大阪市内と会場までをつなぐ航路を運航した。協定の締結により、多くの一般顧客に乗船をしてもらい水素エネルギーの魅力や低環境負荷船舶の有用性をPRするとしている。2026年度内の運行開始を予定する。
プラスチック
三井化学 MI活用で再生プラの品質安定化 2025/10/7
三井化学は、荻原工業、丸喜産業、日本電気(NEC)と共同で、AIにより材料開発を効率化するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)技術を活用し、再生プラスチックの品質安定化と製造工程の効率化に向けた協業を開始すると発表した。再生プラ製造のために廃プラを利用するためには、粘度を均一化するために熟練作業者の経験やノウハウをもとに材料配合を決定し、専用装置で粒度を揃えるタンブリング工程を必要としていた。協業では、リサイクル業者である丸喜産業の工場で得られた膨大な量の粘度データをNECのMI技術で分析した上で、三井化学と萩原工業が共同開発した、再生プラスチック製造中の粘度を計測し追加する樹脂の投入量を調整することで均一化する押出機による粘度均一化装置を用いることで、タンブリング工程を排除する。製造工程の所要時間については、従来比25%削減を目指すとしている。

M&A、出資
JAL 森空バイオリファイナリー合同会社に出資 2025/10/8
日本航空(JAL)は、国産木材由来のバイオエタノールを用いたSAFの実現に向けて、森空バイオリファイナリーに出資したと発表した。森空バイオリファイナリーは、日本製紙、住友商事、Green Earth Institute(GEI)の3社が2025年7月に設立した合弁会社で、木質バイオマスを原料とするバイオエタノールおよびバイオケミカル製品の製造販売事業の実現を目指している。宮城県にある日本製紙の岩沼工場内に実証プラントを建設し、東北地域の森林資源を原料に、GEIが開発したバイオエタノール生産技術を活用し、2027年から年産1,000kL以上のバイオエタノール製造を目指す。
ニュースウォッチ
- メタンから水素・固体炭素 東邦ガス、熱分解技術を実証 2025/10/6
- 日本触媒、海洋生分解性プラ 100キログラムに試作スケール拡大2025/10/6
- カーボンキャプチャー DAC拠点、米からカナダに移転 2025/10/6
- ENEOSHD、オーストラリアで水素の製造実証 200億円投資 2025/10/8
- 双日、植物由来ナイロン商用化 米バイオ化学と提携 2025/10/8
- 合成燃料価格「8年内に化石燃料並み」 出光出資の米HIF 2025/10/8
- ノーベル化学賞北川氏に企業が祝意 レゾナックや大ガス、クボタなど 2025/10/8
- 三菱ケミなど、熱可塑性エラストマーを共同研究 医療機器向け 2025/10/9
- 日本酸素HD、ドイツにCO2精製工場 バイオエタノール副産物活用 2025/10/9
- ベイシアが廃食用油回収、前橋市内7店舗で 再生航空燃料などに活用 2025/10/9
- 長瀬産業、MOF活用し排ガスCO2回収装置実証へ2025/10/10
- CCS事業法、貯留安定期間に10年 移管まで監視2025/10/10