政策・規制、審議会
経産省 マレーシアでAZEC第3回閣僚会合開催 2025/10/17
経済産業省は、2025年10月16日から18日にかけてマレーシア・クアラルンプールで、第3回アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会議をマレーシアと共同で開催したと発表した。会合では、ファイナンスや個別プロジェクトの進展など、この1年のAZECの取り組みや成果についての報告がされたほか、AZECパートナー国と企業や関係機関間で、新たに締結された約50件の脱炭素化関連のMoUについての公表があった。日本は、マレーシア経済省とCCSに関する協力、およびフィリピンエネルギー省とのエネルギー協力に関する覚書を締結した。
主なMoU案件リスト
No. | プロジェクト名 | 実施国 | 日本側事業者 | 相手国パートナー |
---|---|---|---|---|
1 | INPEX Browse E&P Pty Ltd.と中部電力との豪州北部準州でのCCS実現に向けた検討 | オーストラリア | 中部電力株式会社 | INPEX Browse E&P Pty Ltd |
2 | 豪州クィーンズランド州における非可食油糧作物ポンガミア試験植林プロジェクト | オーストラリア | 出光興産株式会社 | StanmoreTerviva |
3 | 川崎重工業とLow Emission Technology Australia (LETA)の重工業セクターでのCO2排出削減実現に向けた共同検討の覚書 | オーストラリア | 川崎重工業株式会社 | Low Emission Technology Australia |
4 | インドネシア国営電力会社 PT PLN (Persero)、中部電力(株)、沖縄電力(株)三社間のインドネシアにおける脱ディーゼル化に関する協力協定 | インドネシア | 中部電力株式会社沖縄電力株式会社 | PT PLN (Persero) |
7 | 国際協力機構(JICA)と国営肥料公社(Pupuk)とのクリーンアンモニアバリューチェーンの構築の推進に関する覚書 | インドネシア | JICA | PT Pupuk Indonesia (Persero) |
10 | Cirebon拡張石炭火力発電案件における脱・減炭素に向けた協業に関する覚書 | インドネシア | 丸紅株式会社株式会社JERA | PT. Cirebon Energi PrasaranaPT PLN |
18 | インドネシアにおけるe-メタン開発に関する覚書 | インドネシア | 東京ガスアジア社株式会社IHI | PT Pertamina |
20 | ラオス国グリーン水素バーナーによる燃料転換事業 | ラオス | TSBグリーンネックス株式会社ラオ・グリーン・ハイドロジェン株式会社MZEC株式会社 | Viet Phuong Investment Group JointStock Company VPG Lao-Viet Sole Company LimitedLao Sanxai Minerals Sole Co., Ltd |
25 | 川崎重工業とPETRONAS CCS SOLUTIONS SDN. BHD. のマレーシアの排出源からのCO₂回収に関するフィージビリティスタディ実施協力の覚書 | マレーシア | 川崎重工業株式会社 | PETRONAS |
26 | 経済産業省とマレーシア政府のCCS分野における協力覚書 | マレーシア | 経済産業省 | Ministry of Economy |
27 | マレー半島沖南部CCS案件Key Principles Agreement締結 | マレーシア | 三井物産株式会社 | PetronasTotal Energies |
29 | 経済産業省とフィリピン・エネルギー省でのエネルギー協力に関する協力覚書 | フィリピン | 経済産業省 | The DOE of the Philippines |
33 | 持続可能な航空燃料(SAF)の合成技術における商用化加速に向けた協働 | シンガポール | 株式会社IHI | ISCE2(: Institute of Sustainability forChemicals, Energy and Environment) |
38 | タイ石油公社PTTとの同国の脱炭素化に向けた水素・アンモニアサプライチェーン構築に関する覚書 | タイ | 株式会社JERA | PTT |
44 | ベトナムでのCCS事業立ち上げに向けた協力覚書 | ベトナム | JOGMECENEOS Xplora株式会社 | Petro VietnamNS2PC |
水素、アンモニア、LOHC
千代田化工 愛知製鋼での水素製造供給事業向け水電解装置を納入へ 2025/10/10
千代田化工建設は、トヨタ自動車と共同開発中のPEM型水電解装置を、豊田通商、ユーラスエナジーHD、岩谷産業の3社が、愛知製鋼知多工場で実施するオンサイト型低炭素水素製造供給時儀容に納入する計画であると発表した。
千代田化工とトヨタ自動車は、2024年2月に、大規模水電解システムの共同開発および戦略的パートナーシップの構築に関する協業基本合意書を締結している。両社が2024年3月に共同で行ったプレゼンテーションでは、FCV MIRAIに採用されている燃料電池を製造するプロセスの9割以上を活用できるトヨタと、水素サプライチェーンの複合要素を最適化する能力を持つ千代田化工、両者の強みを活用することができるとしている。20ftコンテナサイズ単位で5MW級・約100kgの水素製造能力を持つ装置を4つ組み合わせた20MW級を標準パッケージとして設定した場合、単位電解容量は267kW/m2と他社と比較して約1.7倍の水素製造能力となる。更に、10MW原単位装置を4つ組み合わせた40MW級パッケージでは、単位電解容量は約530kW/m2に達するとしていた。
今回、納入を計画する水電解装置は、5MW級装置を3基組み合わせたものとしていて、年間1,600tの水素を製造・供給するとしている。
高砂熱学工業 小水力発電活用グリーン水素供給事業で提携 2025/10/16
高砂熱学工業は、岐阜県高山市にある飛騨五木ホールディングス、井上工務店と共同で、小水力発電を活用したグリーン水素供給事業モデル確立に向けた「戦略的事業提携に関する協定書」を締結したと発表した。飛騨五木HD、および井上工務店は、岐阜県の飛騨高山地域を拠点に小水力発電事業を推進している。高砂熱学は、約20年前より水素製造技術の開発を始め、2025年度より大型水素製造装置「Hydro Creator」(水素製造能力:最大100Nm3/h)を市場展開している。3社はモデルに適した候補地選定や需要先開拓を進める。飛騨五木HD・井上工務店が、小水力発電設備の設計・施工・地域企業への渉外交渉を担い、高砂熱学は水素製造・利用設備の設計・施工、システム全体のエネルギーマネジメントシステム(EMS)の構築を担当する。2040年までに小水力発電事業及び小水力電源による水素供給事業、併せて60件程度の導入を目標としている。協定書締結に合わせ、高砂熱学は井上工務店が発行する種類株式の取得を行うことを決定したと発表した。

合成燃料
ENEOS インドNGAL社とグリーンメタノール供給で覚書を締結 2025/10/14
ENEOSは、インド国営電力公社NTPCの完全子会社であるNTPC Green Energy社(NGEL) と、NGELがインド・アンドラプラデーシュ州で生産予定の再生可能エネルギー由来のグリーンメタノール、およびSAFやLOCHなど水素誘導品の供給に係る覚書を締結したと発表した。NGELは、これまで東洋エンジニアリングと共同で、インド・アンドラプラデーシュ州でのグリーンメタノールの製造及び事業性に関するFSを実施してきた。ENEOSは事業で製造されるグリーンメタノールのオフテイク検討に参画していた。今回、FEEDへの移行を契機として、オフテイクに関する協議をさらに具体化させるためMOUの締結に至ったとしている。NGELは、現在7.2GW以上のグリーン電源容量を保有し、2032年までに60GWの達成を目指している。
CO2回収、DAC、CCUS
TOPPAN、OOYOO CO2分離膜の量産化技術を開発 2025/10/10
TOPPAN HDは、OOYOOのCO2分離膜の量産化技術を開発したと発表した。OOYOOは、2020年1月に設立された、京都大学発のスタートアップだ。支持層の上に、複数のポリマーをコーティングにより保護層、選択層、ガッター層を生成することで、様々な気体の分離を行うことができる。TOPPAN HDとOOYOOは、2023年12月に、OOYOOの分離膜技術を活用したCO2分離膜の量産化に向けた基本合意書を締結した。両社は、2025年10月より、この分離膜を搭載した1日あたり100kgのCO2を回収できる装置を、TOPPAN施設内のボイラーに設置して排ガスからCO2分離実証実験を開始する。今後、両者は膜・モジュール・装置の技術を向上させ、技術を確立した上で、2030年までのCO2分離膜事業の開始を目指すとしている。
中部電力 日豪CCSバリューチェーン構築でINPEXと共同検討深化 2025/10/17
中部電力は、INPEXの子会社であるINPEX Browse E&P Pty(IBEP)社と、名古屋港から豪州・北部準州沖合のボナパルト堆積盆地までのCCSバリューチェーン構築に向けた共同検討の進化に関わる合意書を締結したと発表した。合意書は、2024年10月に締結した共同検討実施に関わる合意書に基づき実施したFSにより、CO2船舶輸送に関する初期的な技術検討で成果が得られたことを受けて締結された。中部電力は、IBEP社と共に今後、最適なCO2輸送方法や日豪の法制度を踏まえた日程の検討などに取り組み、名古屋港CCUS事業の調査を推進する。
運搬・貯蔵、燃焼、その他
川崎重工 海外でのクリーンエネルギー関連技術適用調査が経産省補助金事業に採択 2025/10/17
川崎重工は、2025年8月1日、「サウジアラビア王国・アラブ首長国連邦/天然ガス及び水素焚きガスエンジン導入可能性調査事業」および「マレーシア/産業排出源へのCO2回収技術の適用によるNDCや輸出競争力へ貢献する事業可能性調査事業」の2件が、経済産業省の令和6年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金(小規模実証・FS事業)に採択されたと発表した。
サウジアラビア王国・アラブ首長国連邦の調査では、太陽光発電等の再生可能エネルギー導入で、出力の変動幅が大きくなる両国に、天然ガス及び水素焚きガスエンジン発電設備を出力調整用として導入の可能性を調査する。
マレーシアでの調査では、マレーシア国内の発電所などの産業排出源から川崎重工のCO2分離回収技術 (Kawasaki CO2 Capture, KCC) の適用の有効性、および実証機の導入に向けた検討を含めた調査を行う。
プラスチック
レゾナック 使用済み容器包装プラのガス化ケミカルリサイクルを開始 2025/10/16
レゾナックは、ロッテおよび日本ウエストグループと共同で、ロッテ狭山工場(埼玉県狭山市)で生産ロスなどで排出された使用済み容器包装プラスチックのガス化によるケミカルリサイクルを10月より開始すると発表した。従来、ロッテでは、使用済み容器包装プラスチックの多くを分別し、サーマルリサイクルを行っていた。今回、ロッテで排出された廃プラを、日本ウエストが運搬・中間処理し、レゾナックがガス化によるケミカルリサイクルを行うことで、再資源化を行う。2025年度は、ロッテ狭山工場が排出するプラスチックのうち、約10トンがガス化ケミカルリサイクルされる見込みとしている。

大阪ガス 廃棄バイオプラ活用によるバイオガス製造実証 2025/10/16
大阪ガスは、大阪公立大学および大阪市と共同で、大阪公立大学森之宮キャンパスで使用されるバイオプラスチック製の弁当容器を回収・分解し、中浜下水処理場でエネルギーに変換し再利用する実証実験を11月から開始すると発表した。大阪ガスは。2009年頃からバイオプラスチックであるポリ乳酸を乳酸に分解する技術開発を行ってきた。2023年度からは、大阪市の海老江下水処理場内に設置した小型試験装置でフィールド試験を実施。その結果、下水汚泥に乳酸を投入することで、投入量に応じてバイオガス(約60%がメタン、約40%がCO2)の発生量が増加すること、および下水汚泥単独の場合と比較して、乳酸由来のバイオガスが発生することで約3倍のバイオガスが得られ、安定した運転が可能であることを確認している。実証では、11月4日から12月22日まで、積水化成品工業が製造するポリ乳酸由来の使用済み弁当容器を、乳酸に分解し、中浜下水処理場にある消化槽に投入する。メタン菌により普段発生している下水汚泥由来バイオガスに加え、乳酸由来のバイオガスを得る。発生するバイオガスは下水処理場内でエネルギーとして利用するとしている。

M&A、出資
OOYOO 約3億円の資金調達を実施 2025/10/15
京都大学発の分離膜スタートアップOOYOOは、シードラウンドのエクステンションで、5つのファンドから総額約3億円の第三者割当増資を実施したと発表した。シードラウンドの累計資金調達額は7.4億円になった。
ダイセル ポリプラスチックスの事業を承継 2025/10/16
ダイセルは、子会社であるポリプラスチックスの施栓事業を吸収分割により承継すると発表した。ダイセルは、ポリプラスチックスの事業を統合することで、技術サービスのノウハウの共有、ダイセルの関連事業との連携強化などで、企業価値の最大化を目指すとしている。2026年4月1日の吸収分割効力発生日を予定する。
統計
汎用樹脂 生産、販売量 2025年8月
ニュースウォッチ
- 脱炭素化支援機構、シンガポールのIdeation 3X Private Limitedに出資 2025/10/10
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- 苫小牧、CCUSの先進地へ JAPEXが来月試掘 2025/10/16
- 再生可能エネルギー、世界で最大の電力源に 石炭を逆転 2025/10/16
- 日本液炭、CO2船舶輸送の技術開発に着手 2025/10/16
- 排出上限、取引制度開始の26年度は業界中位を基準に 経産省方針案 2025/10/17