政策・規制、審議会
経産省 GI基金事業の今後の方向性について 2025/11/10
経済産業省は、11月10日に開催された審議会で、NEDO グリーンイノベーション(GI)基金事業に追加・拡充するプロジェクト2つと、留保枠の廃止の決定について発表した。
●概況:
GI基金事業は、これまで基金総額2兆7,564億円のうち、20件のプロジェクトに対し最大2兆4,479億円を拠出することが決定されている。一方、資材・人件費などの高騰、国際情勢の変動などの状況を踏まえ、一層効果的な進捗管理し柔軟な資源配分を行うことが重要としている。
●追加・拡充プロジェクト:
基金の残額の一部を活用し、以下の2プロジェクトを推進する。
1. 次世代型地熱技術の開発
2. CO2分離・回収を前提としたCN型廃棄物焼却処理全体システムの開発
2025年までラボ/ベンチ試験でCO2回収率90%以上などのKPIを達成。引き続き、大規模実証で廃棄物に含まれる炭素回収率90%以上を目指す。
●留保枠の廃止:
当初想定されていないプロジェクト組成や実施中のプロジェクトの加速などに対応するため、予算額の一定割合を留保枠として確保してきたが、プロジェクトが進捗し拠出未定額は減少したことを主要因として、留保枠の設定を維持する必要性は薄くなったことから留保枠を廃止する。
報告では、計画見直し事例として、クリーンエネルギー関連では次の2事例が挙げられた。
1. 出光: グリーンアンモニア製造技術開発
再エネ由来のグリーンアンモニアを簡易に製造できる技術開発について、技術目標が未達であり、今後の見通しも得にくいことから事業中止を判断した。
2. ENEOS: 合成燃料の開発
CO2と再エネ由来水素を原料として合成燃料を製造する技術開発について、建設市況の高騰などによりパイロットプラントの建設・試験の中止を議決した。ENEOSは、バイオ資源を活用した合成燃料の開発に切り替え、GI基金事業外として実施していく。
水素、アンモニア、LOHC
三菱重工 トルクメニスタンでアンモニア・尿素肥料製造プラントのEPCを契約 2025/11/10
三菱重工は、トルコの建設会社ギャップ・インシャート社(GAP)と共同で、トルクメニスタン国営化学公社トルクメンヒミヤが建設するアンモニア・尿素肥料製造プラントのEPC契約を調印したと発表した。トルクメニスタン北西部カスピ海沿岸のキアンリに、トルクメニスタン最大規模となる1日あたりアンモニア2,000トン、尿素3,500トンの生産能力を保有する製造プラントを、仮設桟橋など周辺インフラをなども含めて建設する。三菱重工は、アンモニア・尿素肥料製造プラントの基本・詳細設計、調達、試運転を担当し、三菱重工が関西電力と共同で開発したCO2分離回収技術Advanced KM CDR Processを適用したCO2回収装置も付設される。プロジェクトは、GAP社および三菱商事と連携して推進され、2030年の運転開始を予定する。
東洋エンジ カザフスタン初の尿素プラントにTOYOの造粒ライセンスが採用 2025/11/12
東洋エンジニアリングは、独自技術である尿素造粒ライセンスが、カザフスタンの化学肥料製造会社カズアゾット社が計画する尿素プラントに採用されたと発表した。プロジェクトでは、東洋エンジニアリングが尿素造粒ライセンサーとして、ライセンス供与、Process Design Package(PDP)、主要機器調達、技術サービスの提供を担当する。EPCは中国のウーハンエンジニアリングが請負い、2029年の完成を予定する。
千代田化工 水素SSでの蓄圧器検査手法が東京都の課題解決技術に採択 2025/11/12
千代田化工は、開発した非開放検査手法が水素ステーション(SS)蓄圧器の検査手法として、東京都が公募した「水素実装課題解決技術開発促進事業」に採択されたと発表した。従来、水素SSの蓄圧器検査は、設備を停止しファイバースコープによる目視検査で行われていて、維持管理コストが事業者の負担となっていた。千代田化工が開発した技術は、アコースティック・エミッション技術を応用し、蓄圧器外部に設置したセンサーで設備の稼働中に信号を分析することで、亀裂の有無や進展を診断し設備を停止させることなく検査が可能となっている。千代田化工は今後、開発した技術の認知拡大とともに、検査会社と実施体制を構築し社会実装することで水素利用の更なる普及を目指すとしている。
合成燃料、バイオ燃料
コスモ JR西日本にバイオディーゼル燃料を供給 2025/11/11
コスモエネルギーHDのグループ会社であるコスモ石油マーケティングは、西日本旅客鉄道(JR西日本)が運行する気動車営業列車向けに、100%次世代バイオディーゼル燃料を供給したと発表した。コスモ石油は、子会社であるCOSMO OIL INTERNATIONALを通じて、海外からバイオマス由来のディーゼル燃料調達の安定供給体制を構築してきた。コスモ石油は、今回の取り組みを通じて、鉄道輸送の脱炭素化に向けた取り組みを前進させCO2排出削減に貢献していくとしている。
住友商事 インドで圧縮バイオメタンの製造・販売 2025/11/13
住友商事は、インドのエタノール製造企業トゥルアルト・バイオエナジー社から、同社の子会社トゥルアルト・ガス社(TGPL)の株式の一部を取得し、協業することで合意したと発表した。株式取得後、TGPLは社名をトゥルアルト・スミ・ガス社(TSGPL)に変更する。住友商事は、TSGPLを通じ今後3年間をかけて、インド国内に16基の圧縮バイオメタンガス(CBG)製造設備(1日あたり約320トンの生産能力)を建設し、2026年以降の順次操業開始を目指す。CBGの原料には、サトウキビの搾りかすやエタノール製造時に発生する廃液をトゥルアルト社から調達し、製造したCBGは主に自動車燃料としてインド国内の主要な都市ガス供給業者に販売する予定だ。住友商事は今後、CBG製造に加え、バイオエタノール製造やバイオエタノールを用いたSAF製造など、トゥルアルト社と協業を拡大していくとしている。
CO2回収、DAC、CCUS
川崎重工 CO2分離回収実証設備が完成 2025/11/12
川崎重工は、独自のCO2分離回収技術Kawasaki CO2 Capture(KCC)を適用した商用ベースの実証設備を神戸工場に完成されたと発表した。設備は、DACと神戸工場内の自家発電設備から排出されるCO2を回収するPost-Combustion Capture(PCC)設備から構成される。DAC設備では1モジュールあたり年100~200トンのCO2を回収、PCC設備では年360トンのCO2を分離回収する。KCCは、アミンを担持した多孔質固体吸収材を用い、固定相または移動層でCO2の吸着、脱着を行う。一般的にCO2分離回収で使用されているアミン吸着液を使用した場合のCO2脱離温度は110~130℃であるが、KCCに使用されているアミン担持固体吸収材のCO2脱離温度は60℃としていて、工場内の未利用熱を活用することで、エネルギー効率の向上を実現するとしている。川崎重工は今後、実証設備での技術検証と改良を継続し、CO2回収量の拡大とKCCの社会実装を目指す。

JFEエンジ 廃棄物CRプロセス実証設備が完成 2025/11/12
JFEエンジニアリングは、J&T環境と共同で千葉県千葉市のJFEスチール東日本製鉄所敷地内J&T環境千葉リサイクルセンター内に建設を進めていた、JFEエンジが保有する廃棄物ガス化技術を用いた廃棄物ケミカルリサイクル(CR)プロセスの小型炉実証設備が完成したと発表した。プロセスでは、多様な廃棄物をガス化し、水素とCOを主成分とする合成ガスを安定的に製造することができる。JFEエンジはこのプロセスをC-PhoeniX Processと名付けている。今後、2025年12月から実証実験を開始し、2026年6月に試験完了を予定している。JFEエンジは、実証試験を通じ廃棄物処理分野のトップランナーとして、廃棄物発電と廃棄物CRの両輪で廃棄物処理スキームを確立し、2030年度までの社会実装を目指すとしている。
日鉄エンジ 首都圏CCS事業でのFEEDを受注 2025/11/13
日鉄エンジニアリングは、JOGMECが2030年度までにCO2貯留開始を目指している「先進的CCS事業に係る設計作業等」に採択された首都圏CCS事業について、日本製鉄及び首都圏CCS社それぞれから、基本設計業務(FEED)を受注したと発表した。日本製鉄からは、CO2分離回収設備のFEED業務、首都圏CCSからは海洋設備のFEED業務を受託した。

運搬・貯蔵、燃焼、その他
大陽日酸 鉄鋼加熱炉で水素―酸素燃焼バーナの実証試験に成功 2025/11/12
大陽日酸および欧州産業ガス事業会社Nippon Gases Euro HDは、鉄鋼大手アルセロールミッタルのスペインにあるオラベリア工場で、水素-酸素燃焼バーナ「Innova-Jet Hydrogen」を設置した鉄鋼加熱炉の実証試験に成功したと発表した。大陽日酸は、今後も様々な工業炉向け酸素燃焼技術の研究開発を進めていくとしている。
体制
ENEOS 天然ガス事業をXploraに移管・統合 2025/11/12
ENEOS HDは、ENEOSの天然ガスの液化事業および国内販売事業を、石油・天然ガス開発・生産事業行うENEOS Xploraに移管・統合すると発表した。Xploraが、上流であるガス田開発から下流である販売まで天然ガス事業を一元的に運営することで、経営資源の最適配分を実現し事業に注力できる体制を構築する。
プラスチック
積水化成品 海洋生分解性発泡体を開発 2025/11/4
積水化成品工業は、RETONA FOAM BIOの新グレードとして、海洋生分解性プラスチックを用いたビーズ発泡体を開発したと発表した。積水化成品は、バイオマス原料を配合した生分解性発泡体RETONA FOAM BIOを展開しているが、今回開発した発泡体は、ピーズ発泡技術と主原料である酢酸セルロースの特性を融合させ、海洋に流出した場合でも海中で分解され、マイクロプラスチックとして長期間残留しにくく海洋環境への負荷低減が期待されるとしている。
三菱ケミカル 廃プラCR実証事業に着手 2025/11/13
三菱ケミカルは、竹中工務店、鹿島建設、日本通運、リファインバースグループ、あおぞら社と共同で、環境省の支援事業に採択された「建設現場から排出される廃プラのケミカルリサイクル(CR)実証事業」に着手したと発表した。建設現場から排出される廃プラは、資材搬入時の梱包材や養生材、現場作業時の端材など多種多様で、更に汚れも多いことから分別や不純物除去に手間がかかり、ほとんどが熱回収や焼却、埋め立て処分されている。6社は、廃プラを分解し油に戻して再利用するCRに着目した。三菱ケミカルは、選別・原料加工された廃プラを油化するプロセスを担当する。事業では、LCA分析を実施し、CO2排出量の削減効果を算出することで脱炭素の観点からも評価を行うとしている。
決算
石油・化学会社 決算状況 2025年9月期
重工業、エンジニアリング会社 決算状況 2025年9月期
統計
原油 2025年9月輸入数量 ガソリン 2025年9月生産、販売量、輸入価格
ニュースウォッチ
- シンガポール、SAF税26年10月開始 東京便は330円以上運賃に上乗せ 2025/11/10
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- ENEOS、インドと覚書 グリーンメタノール調達 2025/11/12
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- 石油需要50年まで増加も、温暖化懸念=IEA 2025/11/14