ヴィーガンレザートレンド 植物性廃棄物の再利用
ヴィーガンレザートレンド 植物性廃棄物の再利用

ヴィーガンレザートレンド 植物性廃棄物の再利用

 前回まで菌糸体バクテリア、コラーゲンの培養などにより天然皮革の代替材料を作る動きを見てきた。ヴィーガンレザーのもうひとつの大きな流れが植物性廃棄物の粉末や繊維を再利用してレザー材料のひとつとして使用するというものだ。これは工業的に製造される合成皮革の樹脂や基材の一部として使用されることが多い。

関連資料:「ヴィーガンレザートレンド2023

アップルレザーのインパクト

 イタリアの合成皮革製造メーカーMabelは2010年にアップルレザーの生産を開始している。しかし、Mableはあくまで合成皮革の製造メーカーであり、アイデアと技術はイタリアの発明家Alberto Volcanが2004年にリンゴの搾りかすを利用した組成物を発明したのがもととなっている。

 2008年Volcanの発明をもとにイタリアのボルツァーノでリンゴのペクチンを使用した製品を開発・製造を目的とする会社Frumatが設立された。Frumatはイタリア、トレンティーノ地方の企業と提携し、リンゴの実やジュースを搾り取った廃棄物からカルタメラと呼ばれるリンゴ繊維による紙素材を作り始めた。

 リンゴ農家・企業にとってはリンゴの加工プロセスから出てくるリンゴの芯や搾りかすは自社で処分しなくてはならず、廃棄のためのコストもかかっていたが、工業製品の原材料として供給することで、それまで廃棄物であったものに対して代金も受け取ることができるようになった。

 Frumatはリンゴの搾りかすの粉末を合成皮革の構成材料であるポリウレタン樹脂に混合し、Apple Skinという商標で販売を2010年に販売を始めた。その後、いろいろなブランドがApple Skinを取り扱うようになった。

サボテンレザー

 リンゴなど食物となる植物性廃棄物を利用したヴィーガンレザーはいろいろあるが、メキシコ特産のサボテンを使ったレザーはヴィーガンレザーの中でも一番成功しているかもしれない。

 メキシコ人のAdrián López Velardeと Marte Cázarezはメキシコ特産のサボテンがレザーの代替品として使用できるのではないかと思いつき、2017年に研究を始めた。ノバルサボテンの葉を粉砕した材料をバイオ由来の材料と混合してバインダーを作り、合成皮革の工程で基布にコーティングして製造する。

 ふたりは2019年にAdriano Di Martiという会社を設立し、イタリア・ミラノのレザーショーでサボテンレザーDessertoを発表。各地でサボテンレザーを使用した製品の発表が相次いだ。日本でも2021年に入ってHAYAMIやフレンバシー、PXG Japan、ジパングなどが、サボテンレザーを使用した小物や靴、ゴルフ用品などの製品を発表している。

 さらに、2021年に入るとAdriano Di Martiは自動車用サボテンレザーブランドDeserttexを発表し、BMWが今後内装材をサボテンレザーに変更していくとアナウンスした。車両内装材用レザーの要求特性は、靴やバッグに比べ格段に高いため、自動車用内装材分野への進出は注目に値する。

 Adriano Di Martiの成功の要因のひとつは生産能力の高さだ。報道では現在2haの農場でノバルサボテンの生産を行っているが40haまで拡大が可能としている。また、メキシコとイタリアに生産拠点があり、併せて700,000m/月のサボテンレザーの生産能力を保有しているといわれる。工業製品としてのヴィーガンレザーを視野に入れると原材料の安定供給と生産能力の確保は欠くことができない。

アップサイクルとして

 植物性廃棄物の粉末や繊維を活用したレザーはいろいろなものがある。リンゴ、ブドウ、マンゴ、パイナップル、コーン、コルク、竹、米、落花生、卵の殻・・・。さらには公園に落ちている落ち葉も。これらは動物愛護としての「ヴィーガン」だけでなく、地球環境にやさしい循環型社会を目指した「アップサイクル」のトレンドから発祥している。今後もさまざまな植物性廃棄物再利用レザーが出てくることは間違いない。

関連資料:「ヴィーガンレザートレンド2023

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