中堅自動車部品関連メーカーのM&A動向 日本特殊陶業、リケンNPR、愛三工業
中堅自動車部品関連メーカーのM&A動向 日本特殊陶業、リケンNPR、愛三工業

中堅自動車部品関連メーカーのM&A動向 日本特殊陶業、リケンNPR、愛三工業

 メガサプライヤー デンソーのM&A動向に続き、中堅自動車部品関連メーカー 日本特殊陶業、リケンNPR、愛三工業の近年のM&A動向をまとめる。

目次

日本特殊陶業
 概要
 新事業の方向性
 M&A
 成長
 中期経営計画
 新規事業でのM&A活用
リケンNPR
 概要
 リケンの多角化
 日本ピストンリングの事業展開
 M&A
 中期経営計画
 配管機器製品事業
 熱エンジニアリング事業
 医療機器製品
愛三工業
 概要
 燃料ポンプモジュール事業の譲受
 M&A
 中期経営計画
事業展開とM&A
 一分野への集中投資
 トップシェア確保と成長分野商圏確保
 手始めとして

日本特殊陶業

概要

 日本特殊陶業は、スパークプラグや自動車用各種センサなど自動車関連向け製品が売上高の79%を占める。売上高の19%を占めるセラミック関連製品には工作機械用切削工具や産業用セラミック製品や半導体製造・半導体部品などが含まれるが、自動車の電動化トレンドに伴い、内燃機関向け製品市場の縮小が見込まれる中、新規事業開発に積極的に動いている。

新事業の方向性

 2018年の決算説明会では、新事業の方向性として、環境・エネルギー、医療、次世代自動車の3分野に集中的に取り組んでいくとしていて、その中でも医療(メディカル)分野は、2030年頃に主力事業の一つになることを目指すと明記している。

M&A

 2018年12月、日本特殊陶業は米国の酸素濃縮装置等製造販売を行うCAIRE社、及びイギリス、中国の同事業を行うChart BioMedical社を143百万米ドル(約160億円)で買収した。Chart BioMedical社はCARIE BioMedical社に商号を変更している。 

 その後、日本特殊陶業のM&AはCARIE社を通して米国のメディカル関係企業を買収している。2020年6月には喘息診断機器等開発製造販売のSpirosure社を10億円で、2021年9月には酸素濃縮装置等販売のAMSR社を27億円で、2022年12月には心肺機能診断機器等製造販売のMGC Diagnostics社を225億円で買収している。

 2018年のCARIE社買収から2022年のMGC Diagnostics社買収まで、計420億円あまりをM&Aに費やし、167億円ののれんを計上している。

成長

 日本特殊陶業が、メディカル関連の売上高を単独で公表したのは2019年度(2020年3月期)と2020年度(2021年3月期)のみで、2019年度は206億円、2020年度は248億円であった。2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大影響で、CARIE社の在宅医療用酸素濃縮装置の販売が寄与し、前期比40億円程度の売上増となった模様だ。一方、損益に関しては輸送コスト、部品コスト増により、メディカル関連は2019年度4億円の損失から2020年度12億円の損失に欠損が拡大した。

中期経営計画

 2021年5月、日本特殊陶業は2022年3月期から2025年3月期までの中期経営計画を発表した。それによると、2021年までの中期経営計画では新事業の創出について、M&AでCARIE社などを買収したことを含めて、種まきを進めたが成長ビジョンまでは示せなかったと振り返っている。

 メディカルは日本特殊陶業にとって新事業ではない。事業戦略として中国や米国で増加しているCOPE(慢性閉塞性肺疾患)患者に対応した呼吸器関連ビジネスを拡大させていくとしていて、2022年12月の心肺機能診断機器等製造販売会社MGC Diagnostics社の買収は、事業戦略に沿ったものとなっている。

 2021年度からメディカル関係はセラミック関連事業に集約されたため、具体的な売上寄与は分からないが、買収前となる2021年のMGC Diagnostics社の売上高は64百万米ドル(約75億円)となっていて、2020年度のメディカル関連事業の248億円とあわせて330億円程度の売上規模に成長しているとみられる。

新規事業でのM&A活用

 中期経営計画には新規事業として、森村SOFCと共同で開発を進めているSOFCは確定分野として、そのほかの注力分野として分散電源、スマートモビリティ、ヘルスケアを挙げていて、M&Aを積極的に活用するとしている。

 2018年のCARIE社買収以降、CARIE社を通じてメディカル関連での買収しか公表されていないが、メディカル関連以外のM&Aも検討されていると推定される。

リケンNPR

概要

 リケンと日本ピストンリングは、2023年10月経営統合をしてリケンNPRとなり、リケン、日本ピストンリング(NPR)はリケンNPR傘下のグループ会社の位置づけとなった。 リケン、NPR共に、自動車用ピストンリングを主力製品とする自動車関連事業が85%を占める。内燃機関が将来縮小することに伴う危機感が経営統合という結果を生み出した。ピストンリングなど自動車内燃機関向け製品のみに頼る経営からの脱却の試みは1970年代から行われている。

リケンの多角化

 リケンは1968年の長期計画で多角化を標榜し、次世代戦略分野としていろいろな取り組みを行ってきた。環境機器として米国ルーカス社から耐熱炉の技術提携を行ったことが熱エンジニアリング事業への展開となっている。1976年にはステンレス鋼管用継手の開発を行い、CKサンエツと配管機器事業の業務提携などを経て配管機器事業となっている。EMC事業は1998年に高周波用電波吸収体の開発から始まっていて、理化学研究所の研究室から創業したDNAから研究開発を中心に事業拡大を目指してきた。

日本ピストンリングの事業展開

 日本ピストンリングは、保有する材料、焼結、金属射出成型(MIM)技術を展開し、2011年に新事業創出としてモータ構成部品、医療用デバイス、歯科矯正具分野での事業展開を図ってきた。

 MIM技術を応用した歯科矯正具分野では2014年に石福金属興業から歯科インプラント事業を譲受し、商圏を拡大してきた。また、MIM技術を発展させ非自動車エンジン部品事業の拡大を目的に、同じく2014年に住友金属鉱山から金属粉末射出成形品事業を譲受し、自動車、航空宇宙、産業・医療機器など幅広い用途への展開を図ってきた。

M&A

 両社の近年のM&Aは次の通りである。

 2022年3月日本ピストンリングは、災害医療機器を取り扱うノルメカエイシアを買収した。取得金額は非公開となっているが、2億7,000万円をのれんとして計上している。

 リケンは、2023年5月にJFEよりJEF継手の76.56%の株式を約32億円で取得し、子会社化した(後、商号を日本継手に変更)。2024年2月には半導体向け工業用ヒータを得意とするシンワバネスの株式90%を約80億円で取得した。

中期経営計画

 リケンNPRは、経営統合後初となる第一次中期経営計画(2024年度~2026年度)を2024年2月14日に発表した。事業ポートフォリオ改革、シナジー創出、バランスシート最適化に取り組んで、2026年度の売上高1,800億円、ROE8%以上を目標とする。

配管機器製品事業

 2023年に子会社化した旧JFE継手(現、日本継手)を含む配管機器製品事業は、中期経営計画ではベース事業の一つとして設定されていて、国内配管継手業界トップのプレゼンスを拡大するとしている。2022年度のリケンの配管機器事業の売上高は47億円であったのに対して、2023年3月期のJEF継手の売上高は128億円なので、リケンNPRの配管機器事業はM&Aによって約3倍に拡大するとみられる。

熱エンジニアリング事業

 これまでもリケンはPYROMAXや工業炉PYRORIKなどの製品ラインナップを保有していたが、2024年2月シンワバネスを子会社化したことで半導体製造装置向けヒータ製品のラインナップが加わった。中期経営計画では熱エンジニアリング事業はネクストコア事業の位置づけだ。リケンの熱エンジニアリング事業の2022年度の売上高が22億円だったのに対し、シンワバネスの2023年8月期の売上高67億円が加わることでおよそ4倍に売上拡大になることが期待される。

医療機器製品

 日本ピストンリングは、合金、MIM技術をもとに医療機器関係製品を開発展開してきた。2022年に買収したノルメカエイシアは、災害医療機器の専門商社として。医療機関や政府・地方公共団体等の幅広い顧客基盤を有していて、リケンNPRがネクストコア事業として医療機器関連製品の拡販に力を発揮しそうだ。ちなみに、2022年3月期のノルメカエイシアの売上高は約20億円であった。

愛三工業

概要

 愛三工業は、燃料ポンプモジュール、スロットルボディー、キャニスタなどの自動車部品の製造販売を行う自動車部品メーカーで、トヨタグループ向け販売が60%を占める。また、トヨタ自動車が愛三工業の発行済み株式の28.73%、デンソー8.72%、豊田自動織機7.56%を保有していることからもトヨタ自動車やデンソーからの経営に対する影響を大きく受ける。

 売上高に占める製品は96%が自動車部品製品であり、内訳は燃料ポンプモジュールやインジェクタなどの燃料系製品が44%、スロットルボディーやEGRバルブなどの吸排気系製品が29%、キャニスタなどの排出ガス制御系製品が16%、エンジンバルブの動弁系製品が4%となっていて、電動化によりエンジン車がなくなった場合、ほぼ生産する製品が消滅する。

燃料ポンプモジュール事業の譲受

 2022年9月にデンソーグループの燃料ポンプモジュール事業を譲受及び一部グループ会社の株式取得を190億円で行った。これは、デンソーが電動化や自動運転、コネクティッド関係の成長分野に注力し、非成長分野である内燃機関関係事業の切り離しを進める中での統合だ。

 デンソーの燃料ポンプモジュール事業を取得したことを含めて、2022年度の燃料系製品の売上高は前期に比べ244億円増加し1,046億円となり、売上高に占める燃料系製品の売上高割合は41%から43%と2ポイント上昇した。また、統合後の燃料ポンプモジュールシェアは40%になり、グローバルトップとして競争力を高めた。

M&A

 燃料ポンプモジュール事業の譲受はトヨタグループとしての事業戦略の一環としてのM&Aであった。愛三工業はこれまでM&Aを活用してこなかったが、2023年に入って2社の買収発表を行った。

 2023年6月には固体酸化物形燃料電池(SOFC)部材及び評価装置開発製造販売を行うマグネクスを、2023年11月には群馬県富岡市に本社があるプレス部品製造アイエムアイを買収した。

 マグネクスは従業員10名、2022年7月期の売上高が2億3,900万円、アイエムアイは従業員75名、2023年4月期の売上高が8億5,500万円と比較的小規模の企業だ。

中期経営計画

 愛三工業は、2022年11月の決算説明会時に2023年から2025年度の新中期経営計画を発表している。上述の燃料ポンプモジュール事業の統合のほか、事業戦略として電動化システム製品事業、およびクリーンエネルギー技術活用事業を挙げている。

 電動化システム製品には電池セルケース・カバーがあり、電池ケースをすでに製造販売しているアイエムアイ社の子会社化による体制強化を、電動化の足掛かりとしている。

 クリーンエネルギー技術活用事業では、将来の自動車FCV向け製品の提案、および非自動車用の事業化のため、アンモニアを原料としたSOFCによる水素発電を取り組み事例として挙げている。マグネクスのSOFC部材および知見の活用が期待される。

事業展開とM&A

 中堅自動車部品関連メーカーのM&A事例を見てきた。自動車の電動化トレンドで新規事業の取り組みを加速させるために、M&Aを活用しているのが分かるが、M&Aに対する姿勢と方法に違いがあるようだ。

 日本特殊陶業やリケンNPRは、自動車用エンジン関係部品の売上割合が多いとはいえ、過去の多角化への取り組みや研究開発での展開から、自動車関連以外の事業の下地はできている。

一分野への集中投資

 日本特殊陶業の近年のM&Aは、米国CARIE社を子会社化した上で、CARIE社による比較的大きな海外医療関連会社の買収を行い、メディカル関連事業を集中的に展開させている。2021年度以降メディカル関連事業はセラミックス関連事業に含まれているので売上規模は判明しないが、売上高の7%近くまで向上している可能性がある。

 日本特殊陶業は、中期経営計画で新規事業分野でのM&Aの積極的活用を挙げていて今後の動向が注目される。

トップシェア確保と成長分野商圏確保

 リケンNPRは、JFE継手の買収で国内での配管継手のトップシェアを確実にし、自動車エンジンピストンリング製品に頼る事業ポートフォリオを変革する一躍を担っている。また、シンワバネスのヒータ製品は、成長が期待される半導体製造装置向けであり、成長産業に寄与することが期待される。

 リケンNPRはリケンと日本ピストンリングが経営統合したため、両社がこれまでピストンリングのみに頼らないよう多角化を図ってきた事業展開の経緯があり、事業ポートフォリオとして規模の割りに小規模の事業が多い印象がある。今後、どのように事業ポートフォリオを整理していくのか注目したい。

手始めとして

 愛三工業のM&Aは上記2社に比べると比較的小規模だ。M&Aの活用が初めてということもあり、事業展開も「手掛かり」的な位置づけであり、いろいろなことを試しながらの展開を検討しているようだ。

 M&Aは買収対象社によっては株式取得に多額の対価が必要となる。また、愛三工業のようにトヨタグループから経営上の影響を受けやすい企業は、M&Aを独自の判断で自由に行うことが難しい場合がある。それでも、愛三工業がM&Aを活用したのは注目に値する。今後も自動車部品メーカーのM&A活用が予見され注視していきたい。

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