2025年1月から2026年3月半ばまでに、自動車部品関連会社によるM&Aおよびスタートアップなどへの出資発表は100件に及んだ。この記事では、各社のM&Aおよび出資発表を一覧表示し、一部の内容について内容を記載した。
この記事に含まれる内容
● 買収 : 戦略的事業拡大動向 18件
● TOB : 近年増加 6案件
● 譲受譲渡: 事業再編 譲受10件、譲渡15件
● 吸収合併: 事業強化 8件
● 出資 : 新事業開発 24件
買収
企業買収では、各社が事業領域、または地域領域を拡大する戦略的な動きが見られた。
2024年11月に買収計画を発表した日本特殊陶業は、約1,500億円という巨額の投資を行い、2025年6月2日、東芝マテリアルを買収し、社名をNiterra Materialsに変更した。東芝マテリアルは、EV用ベアリングに使用されるセラミック製ボールでトップシェアを持つ。日本特殊陶業が主力とする内燃機関向け製品に代わる製品事業を手中にした。
愛三工業は、2025年11月17日、ファンド下にあったトライス(三重県松坂市)の全株式を取得して子会社化すると発表した。トライスGrは、車載用モータに使用されるカーボンブラシなどの製造販売を行っている。愛三工業も自動車の電動化対応として、モータ関連事業の獲得に動いた。
電動化部品への事業拡大ではなく、統合による経営強化の動きもあった。
2025年5月、椿本チエインと大同工業は、経営統合を実施すると発表した。両社ともに二輪車用チェーンを製造販売する大手であるが、中国や韓国企業による日本市場への参入による競争が激化していて、合従連衡により経営力を強化した。

TOB
近年、日本でも株式の公開買付け(TOB)による企業買収やMBOが増えている。自動車部品会社に関連したTOBも見られたが、必ずしも順調に進むわけではない。
豊田自動織機の株式非公開化に向けたTOBは、米投資ファンドエリオットの反対もあり、当初設定した株式買い付け金額1株1万8,800円では買い付けが完了せず、2026年3月6日、TOB価格を2万600円に引き上げ、期間を延長することになった。
豊田合成によるシートベルトやエアバッグ製造販売を行っている芦森工業へのTOBについても、2025年9月の時点で、TOB買い付け価格よりも株価が上回っていたためTOB期間を延長している。
日本の自動車部品メーカーへの海外企業からの買収も散見されるようになった。
2025年8月29日、インドのマザーサンGrは、ホンダ系のユタカ技研に対しTOBを開始すると発表した。マザーサンは、これまで同じくホンダ系の八千代工業およびアツミテックを子会社化していて、ホンダが取り持ったTOBとなった。2026年3月11日にはマザーサンによるユタカ技研へのTOBが成立し、ユタカ技研はマザーサンGrの一員となることとなった。

譲受
事業譲渡と譲受は、対象社の立場によって変わるものであるが、ここでは事業を譲り受けた企業として一覧にまとめた。
デンソーは、2025年9月1日、日本特殊陶業にセラミック製品のうちスパークプラグおよび排気センサー事業を譲渡すると発表した。2023年7月に事業譲検討開始の基本合意書を締結した後、2年の時間を費やした。事業譲渡額は約1,800億円と見積もられている。日本特殊陶業は、上記東芝マテリアルの買収で1,500億円を投じていて、M&Aにより事業変革へのスピードを加速させている。

譲渡
譲渡は、成長が見込めない事業についての対処として使用されることが多いようだ。日系OEMの地域での生産縮小や内燃機関関連部品の市場縮小に伴う退却が目立つ。
中国からは、アーレスティ、トピー工業、フタバ産業の現地法人譲渡の発表があった。欧州では、ジェイテクト、河西工業、小糸製作所が一部事業の撤退発表がされた。
ジェイテクトは、2026年3月19日、欧州現地法人の譲渡による特別損失により、2026年3月期の連結決算最終利益が従来予測から150億円減収となる100億円前後になると発表した。譲渡による事業再編には財務的な痛みを伴う。
ブリヂストンは、グローバル協業企業に一部事業を分散させる戦略をとっている。

吸収合併
吸収合併では、子会社に分散していた事業を一体化することで、事業強化を図る動きが見られた。
アイシンは、自動車用化成品等製造を行ってきたアイシン化工を、2025年4月1日吸収合併した。アイシン内にも事業が重複する部分があり一体化により整理を行った。
ニデックは、2025年5月1日、ニデックモビリティよりインバータ事業を承継した。ニデックモビリティの前身は、オムロンオートモーティブエレクトロニクスで、2019年に日本電産(現、ニデック)がオムロンから買収した。ニデックはニデックモビリティのインバータ事業を取り込むことでeAxleの開発、生産の効率化を図るとしている。

出資
スタートアップ等への出資は、企業が発表姿勢を持っているかどうかに寄るところがある。各社、新事業展開での未知事業領域の情報収集や、協業による事業開発としての出資を行う。
豊田合成は、自社のCVCを通じて定期的に出資をしている。種々の分野のスタートアップに出資を行っていて、未知の市場についての成長性や事業環境を探る動きを続けている。
武蔵精密は、2020年4月にJSRより買収したリチウムイオンキャパシタ開発製造会社武蔵エナジーソリューション(元、JMエナジー)社の事業強化のため、韓国バッテリースタートアップBEI Labしゃに出資。また、二輪車用e-Axleの展開強化のため、モビリティスタートアップglafit社に出資した。
